2010年01月02日

初夢 - GeekStation

とあるビル。その一角。常に明かりが灯っていて、まるで不夜城の様。
「ちわーっす」俺はドアを開けて入った。「寒いっすねー、死ぬかと思った。」
「おー!○○クン!今日は早く上がれたのか」奥から佐倉さんがお茶を持って来てくれた。「ほら、とりあえず暖まれ」
佐倉さんはここの管理人だ。けっこういい歳をしている中年太りなオッサンだけど、この佐倉さんの事情通には誰も適わないんじゃないかな。
「シングルどっか空いてるかな?小一時間ぐらい集中してリファクタしたいんだ」
「今空いてるのはペアが1室だけだねぇ。んー、服部さんがあと30分ぐらいで帰宅時間じゃないかな?」佐倉さんはテーブルの煎餅をポリポリやり出した。また太るぞ。「それにしても、DexRouteだっけ。続くね。次の1.9.6はいつ出るんだい?」
「ん〜〜…」俺の手が勝手に壁一面の書棚からテキトーな技術書を抜いていた。「Jamesのやつがさー、わかってねえんだよ。『こっちの構造の方がイイ!』とかメール来てさ、forkもせずにpushしてきやがって。これが見たらヒドイんだわ…」
技術書に目を落とす俺。ここの品揃えは厳選されている。持ち込む人の張り合いもあんのかな?自分が『良書』と思った本を持ち込んでくる。そして俺みたいなのがチョッピリ得をする。
棚によっては「マネジメント」だとか「コーチング」だとかビジネス書っぽい本も並んでるけど、俺には今のところ興味がない分野だね。
お茶を飲みながら本に集中する俺。しばらく静寂の時間が流れる…。

「ふわ〜〜、ねみ」ガチャ、と部屋のドアが開いて、服部さんが出てきた。「やっぱ捗るわ、ここ。助かるねー」
「たまには早く帰らないと」佐倉さんがお茶を入れるためにそそくさと立ち上がった。「奥さんにアイソつかされるぞ」
「わかっちゃいるんだけどさ」服部さんはチョコレートに手を出した。だから太…まあいいや。「家に帰るとダメなんだよ、俺。一行も書けなくなるタイプ」
世の中そんな人もいるんだよね。とか言いながら、俺もアパートに帰る前にこっち寄っちまうクチだけど。
「今週のワークショップってなんだっけ?」
「金曜の夜に、M社さんとこのG言語教室2回目があるね」お茶を入れたきゅうすと一緒に…えっと、バカウケが増えてるんですけど?佐倉さん?「あとエーラブの人たちの『非同期協調とOOインタフェース』が土曜」
「エーラブやるのか…」ちょっと興味を持った。あとで申し込んでおこうかな。
「エーラブの方は、もう一杯じゃなかったかな」
チッ。

「Sakuさん、相談にのって!」もう一つのシングル部屋のドアが開いた。出てきたのは中井戸くんだ。「俺がメンテ続けてるアレさ、企業からオファー来ちゃったよ!」
中井戸くんは同い年なので、なんとなく意識してる存在だ。ライバル心?ちょっと違うか?
「そりゃめでたい!」佐倉さんが席を立った。「どんなトコが声かけて来たんだい?へー、bit社が…」二人で部屋に引っ込んでいった。
ここのサーバ環境はちょっとしたもので、M社とG社が協賛に入ってるおかげでバックボーンがけっこう豊かに使える。フリープランの足かせが少し軽くなる感じ。
それに、やろうと思えば小規模のデータセンターぐらいの設備が使える。
そのためか、署名入りアプリをここから発信している人も多い。
ネックは通信経路。ちょっと細めなので、人気アプリができるとアクセスを捌ききれなくなる。「N社をなんとか巻き込みたいんだよね」が佐倉さんの口癖だ。

それに、法律方面、会計方面と、各種方面が専門のボランティアの人たちがサポートしてくれるから、今みたいな時も対応が素早い。
彼らにしても、そこで独立法人化となるといいビジネスチャンスになるし、持ちつ持たれつなんだろう。
俺ら一般会員もいくらかの会費を払っているし、協賛企業からの寄付金もあるけれど、圧倒的な収入源はこのオファーがあった時に企業から入る紹介料、そしてボランティア有志で開発を続けてるシェアウェアツールの課金だ。
一応、企業ワークショップの時や会議利用の時は場所代をとる仕組みになってるけど、残念ながらさほどの額になってない。
こういった会計の面が全て公開されて運営されてるのも、俺がここを好きで利用している理由のひとつだ。

去年の夏はひどかった。ここからBotNetを広げようとしたバカがいたんだ。
気づくのが早かったから広まる前に対策を打てたんだけど、あの時偶然その場にいた俺は、正直ちょっと興奮した。
でもその後、犯人がじつは会員の一人だとわかった時の佐倉さんの落ち込み様は、見ていてつらかった。
あの時のみんなの頑張りがなくて、BotNetの根城化してしまっていたら…おそらくここは閉鎖していただろうな。
考えるとちょっと怖い。

今日はとくに何もせずにビルを出た。息が白い。
今年はどんな年になるんだろうか。また面白いヤツに出会えるといいな。
どうも男くさいのが玉に瑕だけどね…。
そして俺は明日のために、暗いアパートへと帰路を急ぐ。




はい、夢です。
自分的GeekStationの有り様です。
もちろん、こんな収入モデルじゃホントにやっていけるものじゃないでしょうねぇ、というのは承知の上(苦笑)
いいじゃん、正月なんだからさ!
ラベル:GeekStation 初夢
posted by 未知夢 at 15:25| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | システム開発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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